日本各地の地名にはその土地の言い伝えや、伝説などから名づけられた不思議な地名が残ってる。今回はそんなお話。
普段は気にしないで使っている岩手県という呼び名。
考えてみれば不思議な名前だと思いませんか?
岩に手?まったく関連性がないばかりか、考えれば考えるほど不思議な名前ですね。
昔、昔、この地方に羅刹(らせつ)という鬼が住んでいた。
羅刹は付近の村人をなやまし、旅人をおどしては金品を巻き上げていた。
困った村人は、三ッ石の神にお祈りをして鬼を捕らえてもらうことにした。
ほどなくして三ツ石の神によって鬼は捕らえられ、境内にある巨大な石に鎖で縛りつけられたのだった。
鬼は二度と悪事をしないし、また二度とこの地方にはやってこないと誓った。村人たちは約束のしるしとして三ッ石に鬼の手形を押させて逃してやることにした。
それ以来、この岩には鬼の手形がくっきりと残った。長い年月がたっても、この鬼が岩に押した手形は消えず、苔も生えずいつまでも鬼の手形が残っていた。
鬼がこの岩に手形を押したことが「岩手」の県名の起源だと言われている。また鬼が再び来ないことを誓ったことから、この地方を不来方(こずかた)と呼ぶようになったことも伝えられている。
鬼の退散を喜んだ村人達は、幾日も幾日も踊り続け、神様に感謝のまごころを捧げた。この踊りが名物「さんさ踊り」の始まりとされる。
さんさ踊りは、笛や太鼓や金を打ち鳴らし、独特のリズムに合わせて踊り練り歩くもので、数十人の団体で昼夜を問わず行われる。
太鼓を抱えた着物姿の女性の集団がリズムに合わせて踊る姿はまるでちんどん屋のようではあるが、独特のリズム感は阿波踊りに似ているようだ。
当然、この神社の境内でもさんさ踊りは披露され、特に女性中心に行われる踊りなのが興味深い。ちなみにこのさんさ祭りは8月1日から4日まで行われているが、三ッ石神社での奉納舞は7月24日ごろ、さんさ祭りの安全を祈願して行われる。
またこの神社の境内にある三ッ石はもともと、一個の大きな岩であったが、長い年月の間に三つに割れて現在の三ッ石になった。現在では、この三ッ石には鎖が巻きつけられ、羅刹がつながれていたという伝承を彷彿とさせる。
残念ながら現在では、この鬼の手形を確認することは難しい。
私が岩手の友人から聞いた話では、40年ほど前まではわりとくっきりと鬼の手形を確認出来たと聞く。しかしながら鬼の手形の消滅が何かの災いの前兆でないことを祈るばかりである。
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